心理相談の方法

 

当オフィスで用いる心理相談の方法は、カウンセリング、夢分析、箱庭療法、絵画療法などです。相談者と話し合って、無理のない、自然な回復プロセスに連れ添うために適切と思われる方法を用います。また、すべては説明と同意の上で行われます。相談者ご本人が望まないことや、望む以上のことは決して行いませんのでご安心ください

 

カウンセリング

私たちの多忙な日常生活を考えると、自分自身のことを振り返って誰かに向けて語る機会など、あまりないのかもしれません。カウンセリングでは、じっくりとお話に耳を傾けながら、相談者の皆様が自分の体験を言葉にして語るプロセスを援助します。オーソドックスな共感的傾聴が基本となります。



夢分析

深層心理学では、夢は心の深層から意識に向けて発せられたメッセージであると考えられています。 夢によって呼び起されるイメージを膨らませ、その意味について考えながら、心の深層とのつながりを再構成していく作業を対話を通じて行います。自己実現に至るための、臨床心理学的な一つの手段です。



箱庭療法

芸術表現療法のひとつで、子どもから大人まで行うことのできる心理療法の一種です。セラピストが見守る中で相談者が行うのは、砂箱の中に玩具を使って風景や場面を構成することです。こうすることで、言葉を使わない非言語的な方法によって、相談者は心の世界を表現することができます。



絵画療法

芸術表現療法のひとつです。人間の芸術的な創造プロセスを描画を介して促進し、心理的な健康の改善や、葛藤や問題の解決のための一助とする、心理療法の一種です。相談者の内面から湧いてくるイメージを絵にすることによって表現し、その個人的な意味を対話を介して構築していきます。



折衷的方法

心理相談・心理療法のプロセスのなかで、相談者の方は少しずつ変化していきます。その変化に合わせてアプローチの仕方もそのつど修正・変化していくことになります。結果として、カウンセリングのプロセスの中で、一人の相談者に対してさまざまな技法が折衷的に用いられることになります。これは、一人一人の体形にぴったり合った洋服をテイラーメイドで仕立てる作業に似ているのかもしれません。

 

 

 

 


心理相談Q&A


心理相談に関するQ&Aのコーナーです。相談者の皆様にぜひ読んでいただきたいテーマを五つ取り上げてお話しします。皆様がカウンセリングに対して持っている印象やイメージと照らし合わせると、意外に感じる内容もあるのかもしれません。記事は以下の順に並んでいます。

*リスクはないのか

*時間枠のこと

*精神科とカウンセリングルームの選択に迷ったときには

*どの技法がナンバーワンなのか

*心理テストの今とむかし

 

長めの文章ですから、最後まで読むととても時間がかかります。途中にいくつもボタンを設置していますので、お疲れになったときにはクリックしてお戻りください。

 リスクはないのか

Q クライエント(相談者)にとって、カウンセリングを受ける目的はいま現在の悩みや苦しみから解放されて少しでも楽になることですが、援助を受けることによってもっと悩んだり、苦しくなったりするリスクはないのでしょうか?

A カウンセリングは本来、心の健康の回復・増進や、心の成長の促進を目指して行われるものです。ただ、これまでに蓄積されている効果研究の結果から、すべてのクライエントがその恩恵を受けるわけではないことが知られています。つまり、長期にわたって援助を受けても肯定的な変化が起こらず満足できる結果が得られない、カウンセリングを受けたことによって以前よりもかえって精神的な落ち込みがひどくなったなど、クライエントの一部には無変化や悪化のリスクがあることを否定できないのです。悪化してしまうクライエントは、全体の5%から10%にのぼるという研究データもあります(トップページのトピックスにあるクーパーの文献をご参照ください)。

このようなことが起こらないように細心の注意を払って心理的支援は行われますが、以前に複数の医療機関や相談機関で援助を受けた経験があって、どこに行ってもよくならなかった、もっとつらくなるだけだったという方の場合には、カウンセリングという援助形態がそもそも合わない可能性が考えられます。思い当たる方は、心理相談をせずに何もしないことや、それ以外の援助を受けることがよいのかもしれません。ただし、何の変化も起こらないこと、現状を維持することが大切な場合もあるはずです。このような場合には、変わらないことに積極的な意味が見いだせるでしょう。



 

 時間枠のこと

Q いろいろなカウンセリングルームのホームページを見ると、セッションの時間が50分になっているところが多いのはどうしてなのでしょうか?

A 一人のクライエントにつき1時間のサイクルで行っているからでしよう。50分のセッションが終わってから、10分間で、記録を書いて次のクライエントをお迎えするための準備を行うのです。しかし、最近では60分や90分の時間枠を用意しているカウンセリングルーム(私設心理相談室)も多くあります。1回の面接時間については、いろいろな考え方があるので、一概に何分がよいとは言えないでしょう。また、カウンセリングルームによっては時間の延長を有料で認めているところがあります。時間枠については、これもまた反対にあらかじめ定められた時間を厳格に守ろうとする立場がありますから、この点についてもいろいろな考え方があるように思います。

これはあくまでカウンセラー側のお話になりますが、カウンセリングを行う際にさまざまな取り決めや、約束事を決めることを、セラピーの「構造化」や「枠づけ」と呼ぶことがあります。一般的に、一定の規則を定めて、そのルールの中でセッションを重ねていくことがほとんどです。1セッション何分という取り決めは、時間に関する構造化ということになるでしょう。カウンセリングが日常的な対人関係とは異なる専門的な援助関係であるのは、このような構造化または枠づけによるところが大きいと言えるのかもしれません。ルールが何もないところでお会いするよりも、場所と時間を定めて、相談者とカウンセラーという役割の中でお会いする方が、二人の関係性を良好に保護してくれるはずです。この点に関しては、心理相談以外のさまざまな仕事上の関係にも言えることではないでしょうか。



 

 精神科とカウンセリングルームの選択に迷ったときには

Q 自分が抱えている悩みや苦しみの程度が、精神科クリニックに行った方がよいレベルなのか、カウンセリングルームでもよいレベルなのか、分からないときにはどうすればよいのでしょうか?

A 精神科で行われるのは、医師の診察と薬物療法、そのクリニックに心理士がいればカウンセリング、その他の医学的治療などです。一方、カウンセリングルームで行われるのは心理的支援で、基本的にはカウンセリングというかたちでお話を聞くことが中心になります。どちらに行けばよいのか迷ったときは、精神科の受診でも、カウンセリングルームの来談でも、どちらでもよいと思います。まずは行動に移してみましょう。あなたのお話を一通り聞いて、精神科医やカウンセラーはどちらにすればよいのか助言してくれるはずです。場合によっては、精神科的治療とカウンセリングの併用もあり得るでしょう。おそらく、「自分が抱えていることは重いけど、精神科に行くほどではない」とお考えの方が第一の選択肢として選ぶのは、カウンセリングルームであるように思われます。最初の選択として、それは正しいと思います。心配はいりません。そんな場合でも、カウンセラーは、適切な判断のもとで相談者の方にとって必要なケアを提案してくれるはずです。

2000年くらいのことであったと思います。うつ病に対する誤解をとくことを目的として、国や製薬会社による「うつ病は心の風邪」という啓発キャンペーンが日本でありました。その頃から精神科に対する精神的なハードルが低くなって、以前よりも受診しやすくなったように思います。そのような時代的な流れもあって、精神科を受診する相談者層とカウンセリングルームを訪れる相談者層が、かなりの程度重なりつつあることが推測されます。その意味で、「精神科か?カウンセリングルームか?」という迷いは、時代的に自然なことなのかもしれません。いずれにせよ、臨床心理士や公認心理師が提供できるのは、心理的支援としてのカウンセリングであって、精神医学的な治療ではありません。もしもあなたがお薬を服薬することを少しでもお考えであれば、まず最初に精神科や心療内科を受診することをお勧めします。



 

 どの技法がナンバーワンなのか

Q カウンセリングにはいろいろな立場や技法があります。たとえば認知行動療法と精神分析は、どちらがより効果的で優れているのでしょうか?

A これまでの研究からは、どのような技法にも一定の効果があって、ある技法が他の技法よりも優れているという結論は出されていません。つまり、他を圧倒するようなナンバーワンの技法などないのです。むしろ興味深いのは、さまざまな技法に共通して認められる、有効と考えられる共通要因についての研究です。これは、このウェブサイトのトップページにあるカウンセリング・トピックスの記事「カウンセリングの種類によって効果に違いはあるのか」の中で詳しく紹介していますのでご覧ください。技法の違いこそあれクライエントに肯定的な変化を生み出すのは、自然回復力が引き出されること、クライエントに希望を与えることができること、クライエントとカウンセラーの関係性が良好に保たれること、といった点にかかっているように思われます。これは、ランバート(1999)が推定した「カウンセリングに関わる要因がクライエントの改善に貢献する割合」から導き出される、ひとつの考えです。

クライエントの皆様の中には、とてもよく勉強されている方がいます。たとえば、このような悩みや症状には○○療法がよく効くといった知識を得て、ある特定の技法を求めて来談する方のことです。一定の症状に対する特効薬のような作用のことを、カウンセリング効果の特殊要因といいます。たしかに、パニック発作には○○療法、抑うつには○○療法など、有効な組み合わせに関する研究が蓄積されつつあります。効果にかかわることでもあり、相談者の方がセラピーに向ける期待はとても重要です。もしも特定の技法を希望されるのであれば、その技法を活用した心理的支援を実際に行っている心理相談室に申し込まれることをお勧めします。




 心理テストの今とむかし

Q カウンセリングを受けると心理テストが行われる場合があります。心理テストでは何が分かるのでしょうか?それから、どうして行われるのでしょうか?

A まず心理テストから「何が分かるのか」という点ですが、心理テストによってクライエントの心理学的な情報を入手することができます。心理テストにはさまざまな種類があります。知能を測定するもの、認知機能を測定するもの、気分や感情を測定するもの、性格傾向を測定するもの、障害や病気の程度を測定するものなどがあって、目的に応じて使い分けられています。それから、心理相談の世界では「見立て」という表現がよく使われるのですが、心理テストによって一定の心理学的診断としての見立てを得ることが「どうして行われるのか」に対する回答になるでしょう。カウンセラーは、心理テストを使って心理アセスメントを行うことが割とよくあるのです。

ここで心理学的診断という言葉を使いました。しかし、それはあくまで「心理学的」なものであって、カウンセラーは精神医学的な診断行為は行いません。診断となると、公認心理師ではなく精神科医の領域になります。ですから、カウンセリングルームのカウンセラーが「あなたは○○障害です」と、心理テストを使って病名を告げることはありません。

見立てを目的として、これまではカウンセラー側の都合で心理テストが行われることが少なくなかったのですが、最近では、心理テストをセラピーの媒介として協働的に使用する方法が発展しつつあります。それは、心理相談の中で心理検査の結果について話し合い、相談者の自己理解を促進する方法です。この方法の場合、たとえば「自分の性格傾向を客観的に知りたい」という相談者のニーズに応じて心理テストが行われることになります。今とむかしでは、心理テストの使われ方も大きく変わりました。カウンセラー側の見立てのためではなく、相談者と二人で話し合うことを目的として心理テストが活用される時代になったのです。

それから、カウンセリングの中で心理テストが使われることもあれば、それとは別に実施されることもあり、心理カウンセラーによってさまざまな使い方があります。カウンセリングルームによっては別途の料金がかかる場合がありますので、料金システムを確認したり、不明な場合には質問するとよいでしょう。医療機関では心理テストが保険適用されますが、今の段階(2019年現在)では心理相談室では適用されません。

 

 

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