弱点の克服

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人間は誰しも弱点を持っています。小学校にあがる年代になると、私たちは周囲のことが前よりもよく見えてきて、さまざまなことに気がつき始めます。ある子どもは「自分はクラスメイトと比べてどうやら足が遅いようだ」と気づきます。ある子どもは「自分は算数の計算を解くスピードがとても速いようだ。いつもみんなより早く計算ができる」と気がつきます。私たちは、様々な学習の機会、技能の習得、人間関係を通し、自分の得意・不得意にだんだんと気づいていくのではないでしょうか。

大人になったみなさんは、自分が苦手だなと思うことや自分の弱点についてどう考えているでしょうか。自分の弱点を知り、それを克服することができれば、大きな成長や成功に結びつきます。そのため、できるだけ弱点を克服したり小さくする努力をしている人も多いかと思います。

さて、私はカウンセリングで多くの人の話を聞きます。例えば、「私は優柔不断で何事も決められません。決断できる人間になりたいです」とか、「私は勉強の計画を立てるのが苦手です。計画性のある生活が送れるようになりたいです」など、自分の弱点を克服してよりよい人間になりたいと望む人は多いです。そういう時、人は自分の弱点がどこから発生しているのか、克服するために自分は今後どういう考え方で事に臨んだらいいのかを考えたりします。あるいは、考えるよりも先に行動を起こす人もいます。弱点や苦手となる場面、あるいはそのような環境にあえて飛び込み、練習や慣れで克服しようと思う人たちです。例えば、人と関わることが苦手なので、あえて接客業のアルバイトを選び、人との関わりをたくさん経験しようと思う場合などです。しかし、それが成功する場合と失敗する場合があるなと感じています。これらをよく見ていくと、どうやら簡単に克服できるものと、簡単には克服できないものとが存在しているようなのです。

例えば、大勢の中で自分の意見を堂々と言うことが苦手なので、それを克服するためにディスカッション系の授業を履修して頑張ろうとする人がいます。この場合、経験や場数を踏むことでおそらく自分は克服できるだろうという見通しがあればそれに越したことはありません。例えば、普段友達二~三人と話すことに苦はなく、もう少し多い人数の中でも同様に意見が言えるようになりたいという人であれば、場数を踏むことに意味があるかもしれません。ところが、普段、人づきあいが全くなく、先生に話しかけられると不安や緊張が高まりすぐに逃げてしまう人がいたとします。このようなケースでは、いきなり見ず知らずの大勢の人たちの中でディスカッションを試みようとしても、その一歩手前の段階に到達していないため、ディスカッションをすることが高いハードルになってしまうことがあります。もし弱点を克服しようとする場合は、それを克服することが自分にとってどれだけ高いハードルなのか、克服できる可能性はどの程度あるのか、もう少し低いハードルのところをまず経験したほうがいいのかなど、現実状況を吟味する必要があるかもれしません。行動したからといって必ずしも成功するとは限らないわけです。

では他に道はないのでしょうか。実は、自分の不得意なことをあえて避けることで成功した人たちもいます。これは一見すると、後ろ向きの考え方と思われがちです。しかし、無理に成功を追求しすぎて自分を追い込み、こころの病気にかかってしまうのであればそれは考えものです。人生の中で何に時間を割くのか、何に価値を置くのか、その選択は人それぞれです。「不得意な分野を克服したとしても、もともと苦手な面だから、一般の平均以上には伸びない。それならば、むしろ得意分野を伸ばすことに時間を使ったり力を入れるべきだ」と考える人もいます。そうすれば伸びしろがあって、人より秀でた部分を武器にすることができると推奨する人もいます。理系は苦手だし、将来は苦手分野に進むつもりはないので、克服する必要はないから、苦手は苦手なまま置いておこうという選択も場合によっては悪いことではありません。

また、弱点の克服はとかく自分一人でなんとかするべきものと思われがちです。しかし、もう少し広い視野で見た時に、人と人との関わりによる解決ということも可能です。もし、どうしてもこれが苦手という能力やスキルがある場合、周囲にそれが得意な人がいれば得意な人にその仕事を任せることもできます。あるいは、得意な人から様々なヒントをもらい効率よく作業をすすめるアイデアを教えてもらうこともできます。そうやって苦手や得意な部分を人に補ってもらいサポートしてもらえれば、弱点を全て一人で解決する必要などなくなるのかもしれません。

私たち人間は完璧ではありません。そして多種多様です。だからこそ、自分の弱点に捕らわれるだけでなく、周囲の人たちの困っていることにも目配りをし、時には手を差し伸べてあげたり、一緒に方策を考えてあげたりする協力関係が必要です。そのような意識があれば、もっともっといろいろなことが解決するのではないかと思います。

(一粒の麦 No.57 2018年3月)

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2019年04月02日