はこにわサロン東京(東京都港区)| 全国のカウンセリングルーム探訪

TOP page>>コラム>>全国のカウンセリングルーム探訪>>はこにわサロン東京(東京都港区)

 

【はこにわサロン東京】がある街、東京都港区

 

東京都港区と言えば、まず東京タワーでしょう。いまは東京スカイツリーに象徴的建造物としての地位を奪われつつありますが、東京のシンボルの一つであることに変わりありません。その他にも見所は数知れず、明治記念館、赤坂迎賓館、赤坂サカス、虎ノ門ヒルズ、レインボーブリッジなどがあります。美術館も豊富で、国立新美術館、東京都庭園美術館、根津美術館、森美術館などがお勧めです。

仏像もさまさまです。大倉集古館の普賢菩薩騎象像(国宝)、善福寺の木造了海坐像、根津美術館の地蔵菩薩、増上寺の阿弥陀如来坐像、釈迦三尊像、木造十六羅漢像、四天王などがあります。京都や奈良でもないのに、国宝があることに驚きです。12世紀に作られてから火災で焼けずによく残ってくれたものだと、その奇跡に感謝したいと思います。

さて全国のカウンセリングルーム探訪は、今回、東京都港区の“はこにわサロン東京”をご紹介します。ウェブサイトはこちらです。→東京・青山のカウンセリング|はこにわサロン東京 吉田美智子先生が代表をつとめるこの相談室は、箱庭療法を専門とすることが最大の特徴になっています。それでは概要です。

 

 

 

はこにわサロン東京の概要

 

カウンセリングルーム名:【はこにわサロン東京】

住所:東京都港区赤坂7−5−34インペリアル赤坂フォーラム338号室

TEL:公開されていません。ご連絡はホームページのメールフォームによるお申し込みのようです。

代表:吉田美智子
東洋英和女学院大学大学院人間科学研究科臨床心理領域修了 心理学修士 公認心理師 臨床心理士

ホームページ:https://hakoniwasalon.com/

アプローチ

言葉を介した対話によるカウンセリングと、箱庭療法、絵画療法、夢分析などのイメージを活用したカウンセリングを行っています。ユング心理学に基づいた臨床実践を行っています。

対 象

相談できる内容はとても幅広いです。抑うつ、無気力、不眠、適応障害、摂食障害、ネット・ゲーム依存、起立性調節障害など心身の病に関するご相談。HSP・HSC(ひといちばい繊細で敏感)、子どもと大人の発達障害(ADHD、ASD)などに関するご相談。不登校や学校での適応、学習、問題行動についてのご相談。親子関係、子育て、しつけについてのご相談。アダルトチルドレン、機能不全家族、DV、ひきこもりなどご家庭内のご相談。傷つき、トラウマ、強い怒りなど、ご自分の中の抱えきれない辛さについてのご相談。キャリアプラン、働き方、結婚、夫婦関係など生き方についてのご相談。その他。

料 金

初回カウンセリング(1回目):70分間・1万円(税込)
継続カウンセリング(2回目以降はいつも):50分・8千円(税込)
オンラインカウンセリング:初回70分1万円、2回目以降50分8千円(税込)
体験箱庭:箱庭制作とカウンセリング 1回70分1万円(税込)
なお、この料金は2019年8月現在のものです。

 

箱庭療法専門のカウンセリングルーム

 

吉田先生が代表をつとめる【はこにわサロン東京】の最大の特徴は、名前の通り箱庭療法を専門にしていることにあると思います。ただ、誤解を避けるために言わずもがなのことを申し上げておきますが、箱庭療法しか行わないという意味ではもちろんありません。

吉田先生は、ユング心理学をベースにしたカウンセリング・箱庭療法を実践しています。これは、トポス心理療法オフィスの代表と同じオリエンテーションです。吉田先生は、大学を卒業して社会人としてご活躍されていた時代に、いまは亡き日本の臨床心理学の巨人・河合隼雄先生の本と出会い、心理臨床家になるために大学院に進学されました。ユング心理学を学ぶためです。ユング心理学は幅が広い上に奥行きが深いのですが、それにしてもカウンセリングルームの事業所名に「はこにわ(箱庭)」の文字を入れるほど箱庭療法に魅せられているのはどうしてなのでしょうか?

ウェブサイトの中に箱庭療法の説明ページがあります。こちらの「心理カウンセリングとは」を御覧ください。このページの右下部には、YouTubeにアップされた映像がリンクされています。それは、吉田先生ご自身が箱庭を制作するデモンストレーションの動画です。皆さん、ぜひご覧になってください。

これを見て思ったのです。箱庭療法を行うことに理由などいらない。セラピストとして箱庭に熟達するには、まさに「好きこそ物の上手なれ」なのです。問うこと自体が無意味ではないかと反省しました。かくいう私(ライター:T)も、実は精神科病院に勤務していた頃には、かなり熱心に箱庭療法を実践していた人間です。少し脱線して自分のことを書きます。

私が駆け出しの頃に勤務していた病院には、箱庭療法を行うある精神科医がいました。ユング派分析家の樋口和彦先生の「教育分析」を継続的に受けていた方と記憶しています。その精神科医はなんと、箱庭の箱を二つ並べて使う方でした。私もその精神科医の道具を使わせていただいて、箱庭療法を覚えていきました。そのせいか、私は箱庭療法というものは箱を二つ並べるのが普通なのだと思っていました。いま考えると、とても型破りですね。その病院から別の病院に移籍して、また箱庭療法をカウンセリングのメニューに加えました。しかし、病院の予算が厳しく、箱庭関連の道具を購入することは困難なことでした。仕方なく、私は箱庭の箱を自作しました。もちろん二つです。砂は、川の砂を採取して洗って使いました。人形も、もちろん自前です。これはと思う玩具を旅先でいろいろと購入して、すでにかなり収集していたのです。それでも足りないと思われる玩具は、日曜大工で作りました。あの頃はとても箱庭療法に心酔していました。理由などありません。いまはもう箱庭から離れて、ユング心理学好きの自分は心の奥底に隠れています。隠れユング派を自認しています。

さて、箱庭に関する自己開示はここまでとしましょう。

日本の臨床心理学の世界も世代交代が進んでいます。そのせいか、河合先生によって日本に導入された箱庭療法の使い手が減少しつつあると耳にすることがあります。河合隼雄の名前を知らない大学院生、河合隼雄の本を読んだことのない学生、中村雄二郎の「臨床の知」など耳にしたこともない心理臨床家、確かに少なくないような気がしています。河合先生と中村先生の『トポスの知―箱庭療法の世界』は、いまも読み継がれているのだろうか?

論理実証主義の亡霊が名を変えて「エビデンス」に変身し、臨床心理学の世界を覆い尽くそうとしています。そのため、エビデンスのベースに乗りにくい各種のアプローチは、次第に忘れ去られようとしています。まるで全知全能の神ゼウスならぬエビデンス神によって、全宇宙が支配される物語が展開しつつあるかのようです。残念ながら、箱庭療法もエビデンスのベースに乗りにくいアプローチです。かつて河合隼雄先生が学会をリードしていた頃、われわれは個別事例を大切にして、実践に基づくエビデンスを構築しようとしていました。しかし今は、エビデンスにもとづく実践が、言い換えるとエビデンスに支配された実践がわれわれを拘束するようになりつつあります。

箱庭療法を媒介として回復していくクライエントはたくさん存在しています。子どもだけでなく、大人もそうです。このような、確かな効力のある箱庭療法が今後も存続していくためには、やはりエビデンスを示すような研究がたくさん現れる必要があるのかもしれません。エビデンスというトレンドを完全に無視して唯我独尊を貫くのではなく、「やれやれ仕方ないねー」とつぶやきながら、少しずつ実証的なリサーチを積み上げていくのです。それから、臨床家の若い世代に対する教育も不可欠であると思います。箱庭療法の素晴らしさに触れる体験ができるような機会を、ベテランの臨床家たちが提供していくのです。これは日本箱庭療法学会がすでに尽力していることなのかもしれません。しかし、今後は、公認心理師の大学教育がカギになるはずです。今の段階で箱庭療法について教えている大学は、一体どれくらい存在しているのでしょうか?

さて、吉田先生の【はこにわサロン東京】では、箱庭作品の写真をアルバムにしてクライエントの方々にプレゼントしています。おそらく、出来上がった作品をスマホで撮影するクライエントが少なくないのでしょうが、セラピストが一連の作品を一冊にまとめてプレゼントすることには、クライエントにとっていろいろな意味と恩恵があるのだと思います。振り返って「見る」こと、作品の流れに内的な変遷を重ね合わせて自分自身の変化を実感として我がものにすること、このようなことがアルバムのページをめくることで可能になるのかもしれません。今後、アルバムのプレゼントは、箱庭セラピストの定番になるはずです。

箱庭を作るのはクライエントです。セラピストはその場にいて見守る役割を担います。その意味で、セラピストとの関係性が少なからず箱庭に反映されることになりますから、セラピストの存在つまりプレゼンスが非常に重要になってきます。吉田先生がそこにいることによって、クライエントは安心して自分の内的世界を表現し、それにともなって回復過程が展開していくのでしょう。お会いしたことのない吉田先生の存在感を文章にすることはできませんが、きっとディスアーミングな感じで、ホッとした安堵感をクライエントに与えるようなお人柄なのだと思います。この部分はエビデンスのベースに乗りにくいのかもしれません。しかし、箱庭療法において極めて重要なファクターであると確信しています。

 

おわりに

 

箱庭療法には、ユングだけでなく、ローエンフェルド、カルフ、そして河合先生の精神が宿っています。吉田先生は、そうした先人たちの精神を受け継いで日々の臨床を実践していらっしゃいます。【はこにわサロン東京】が、関東における箱庭療法の中心としてますます発展していくことをお祈りしています。

箱庭療法は、子どもの臨床に従事しているカウンセラーには必須でしょうが、もちろん大人の臨床でも幅広く活用することが可能です。私の個人的な経験では、トラウマを抱えたPTSD(心的外傷後ストレス障害)のクライエントにも適応があると思っています。以前、長期反復性のトラウマのある複雑性PTSDの箱庭療法について、あれこれとペーパーの中で述べたことがあります。

心の中で繰り広げられている多声的なポリフォニーの世界が目の前に展開して視覚化される、内的な世界を外在化して体験することができるなど、箱庭療法は、トークを中心としたセラピーでは得難い具体性をもたらしてくれます。箱庭をやってみたいというクライエントはたくさんいます。しかし、箱庭を使うカウンセラーが増えないかぎり、クライエントにその機会は与えられないことになります。特に若い世代ですが、箱庭療法に魅力を感じる心理カウンセラーたちが増えていくことを願うばかりです。

最後に、この記事は【はこにわサロン東京】のウェブサイトを拝見して書かれたものです。そのため、トポス心理療法オフィスは【はこにわサロン東京】が提供するカウンセリング・サービスについて、詳細を把握しているわけではありません。ご相談することをお考えの東京都内の方は、直接吉田先生のサイトをご覧になってお申し込みください。よろしくお願いします。

 

前の記事「カウンセリングオフィス心葉」へ>>次の記事「幸朋カウンセリングルーム」へ

 

トップページへ-札幌のカウンセリングルーム・トポス心理療法オフィス

2019年03月20日