パーソナリティと病気

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十人十色と言いますが、人の性格や感じ方には違いがあります。何がストレスになるのかも千差万別です。しかし、ある種のパーソナリティを持つ人たちは、似たような状況で似たような反応を示します。また、あるタイプのパーソナリティは、ある種の病気を引き起こす危険因子になってしまうこともあります。

たとえば、必要以上に活動的で、私生活を犠牲にしてでも仕事を優先させようとする人がいます。その人は、自分の仕事や行動にとても自信を持っていますし、非常に負けず嫌いです。いろいろな局面で闘争心を燃やし、強気の姿勢で日々を過ごしています。会社員であれば、残業などをむしろ当然のようにこなす人です。活動のテンポも速く、短気でせっかち。会話しようものなら早口で言葉をまくし立てることもあります。人から「仕事の鬼」「トップセールスマン」「熱い魂を持っている」などと言われ、職場では重宝がられるかもしれません。しかし、このようなアクティブなありようを長期的に続けていくことは、実はその人自身の心身にとって決していいものではありません。このようなタイプの人をアメリカの心臓の専門医フリードマンとローゼンマンは「タイプA」の人と呼びました。「タイプA」は、狭心症や心筋梗塞を引き起こす原因ともなる行動をとりやすい人たちのことです。何らかのストレスが人にかかると交感神経が興奮し、脈も激しく打ち始めます。タイプAの人たちは、他の人たちと比較して、心臓の病気にかかる確率が7倍ほど高いのだそうです。元気はつらつで、何にも手を抜かずガンガン突き進む闘争タイプの人たちですが、実は案外病気になるリスクが高く良い面ばかりでもないようです。

また逆に、目の前の仕事をコツコツとこなし、一つの事を繰り返し続けていくことで能力や技術を向上させていくことが好きな職人タイプもいます。タイプAと違い、人中ではそれほど目立つ存在ではないかもしれませんが、縁の下の力持ちのように地味に仕事をこなしてくれるありがたい存在です。ただ、こういうタイプの人たちは日常生活の中でやることや状況が大きく変わると急に不安が強まります。そもそも彼らは安定志向で、変化を嫌います。未知の可能性に向かって飛び込んでいくより、今の居心地のいい環境の中でやっていきたいという保守的な気持ちの強い人たちです。マイペースで頑固なところもあるため、周囲の人たちの意見にあまり耳を貸そうとしません。環境が変わり不安が強い時に、ちょっとしたミスや失敗をしただけで落ち込んでしまったり、時にはうつ病になることもありますから、注意が必要です。

また、自己主張しない過剰適応タイプの人たちもいます。なんでも我慢し、対人関係でのトラブルを回避するため不快でもニコニコして怒らない人がいます。周囲からみれば、いつも笑顔で優しい人なわけですから、悪い評価は聞こえてきません。しかし、常に自分の気持ちを押し殺しているわけですから、ストレスはどんどんたまります。そのストレスは、こころの世界で解消する道が閉ざされてしまうと、身体の症状となって表れ出てくることがあります。過剰適応タイプの場合、心理的な要因によって起きる胃痛、頭痛など身体症状を出しやすいようです。

過剰適応タイプに近いものとして、完璧主義、完全癖タイプがいます。社会の中で適応していくには、約束の時間を守ること、責任を持って仕事をこなすこと、ミスをしないこと等はある程度必要です。こういう基本的なことができないと、その人は能力を疑われ、人としての信頼や信用を失うこともあります。完璧主義の人たちは、これらのことをある程度ではなく、すべて完璧にこなすことを目指し活動しています。しかし、世の中はそんなに簡単ではありません。1人の人間の能力が全方向にパーフェクトということはありえないからです。実際できないことだって山ほどあります。完全主義の人たちは、心の奥底に強い不安を抱いている場合が多く、自身の不安に直面し圧倒されないよう完全癖でガードしようとします。常に全方向にエネルギーを費やし失敗しないようにと緊張状態にありますから、完璧主義タイプの人は、循環器系統の病気になりやすいと言われています。高血圧や不整脈、あるいは血流の悪さから腰痛や肩こりなどもみられます。

今回は一部の特徴的なパーソナリティについて取り上げてみました。ここでお話したタイプはみな病気にかかりやすいという点で共通点があります。また、社会や他人から重宝がられ信頼され、「いい人」という高評価を与えられやすいといった共通点もあります。このようなタイプは、病気や心理的な問題が表面化してこない限り、周囲も本人もそれを変えようとはしません。病気になって初めて自分のありようが実はそんなにいい面ばかりではないことに気づいたりします。逆に、病気をすることによって自分では受け入れられない反対の極のあり方の中に実は素晴らしい可能性が潜んでいると気づく場合もあります。たとえば、完全癖の人はぐうたらしたり、いい加減に仕事をやることを嫌います。それは悪いことだと思い込み、拒否し続けます。しかし「いい加減」も「柔軟」と紙一重みたいなところがありますし、それが悪いというばかりでもないかもしれません。パーソナリティが良いか悪いかという判断は、着眼点を変えればいくらでも違って見えてくるものです。大切なのは、一つの視点に凝り固まらないこと。時には違う角度から自分のパーソナリティを点検してみるのもおもしろいかもしれません。

(一粒の麦 No.46 2012年9月)

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2019年04月09日