不安とつきあっていく

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春は物事が新しく始まることの多い季節です。新しい生活には、楽しい面がある一方、よくわからない状況に出会ってとまどったり、不安になったりする面も多くあるのではないでしょうか。小さな不安でも、解消されないと蓄積されていき、気をつけていないと不安なことだらけになってしまいます。

また、進学や進級は、一般的には喜ばしい出来事だと考えられがちです。しかし、新しい環境や以前と異なる状況に入り、生活を切り替えて過ごすということは、喜んでいる気持ちとは別に、身体やこころの中では、その環境に慣れようとして無意識的な努力がなされている状態でもあります。いわば、人の心身にとって、ストレスがいつもより強くかかっている状況といえます。したがって、本人もさほど気づかないところで、想像以上にこころや体が働き、心身のエネルギーを消耗してしまうこともままあります。春先はエネルギーが消耗されやすい時期であり、体やこころに余裕が少なくなる時期だと心得ておくとよいと思います。

こころや体に余裕がない時には、普段以上に精神的に、あるいは身体的に不調が生じやすくなります。もともと心配性で不安になりやすい人は、いつも以上に強い不安を経験しやすくなります。一般に、人は不安を感じることで、先を予測し危険を回避したり、確認をしたり、事態が悪化するのを防ぐために予防措置をとったりします。いわば不安は、問題悪化を食い止めるための信号にもなっており、そういう意味で一種の防御手段であるとも言えます。しかし不安が強くなりすぎると生活に支障が出たり思考が狭められたりします。いつも気になっているその一点についてばかり考えてしまう。それは問題解決をするための方策を考えているわけでもないという状態です。

新しい環境では、小さな不安がたくさん出てきますが、例えば、必要な情報を得さえすれば不安が解消されるような問題や、確認作業をすれば不安が収まるような問題などは、比較的簡単に解決することができます。そういう問題は、あまり長く抱え込まないようにして、その場その場で適切に対処をしていけば、不安が蓄積されていくことを防ぐことができます。しかし、中には対処することが難しいという問題もあるかもしれません。例えば、非常に強いショックな出来事に遭遇したような場合などは対処が難しくなります。人間のこころはとても不思議なもので、何か大きなショックに遭遇した時、普段生じるような自然なこころの反応が起こらなくなる場合があります。例えば、本来ならば悲しいと感じて泣くような場面や、不安になって当然という状況におかれているのに、そのような感情をストレートに感じることができにくくなったりします。直接その感情に触れてしまうと、こころが大混乱を起こしてしまうため、一時的に感情を自分から切り離し置いておくという働きが人には備わっています。本当は何らかの感情を感じていいはずの状況で、それがないかのようになってしまう場合は、いつも以上にダメージが大きいと考える方がいいかもしれません。そんな時は、その問題を一旦脇に置いておくという方法もあります。置いておくだけでは解決はしないですし、いつまでも放置して回避しているわけにもいきませんが、今すぐにそれを取り扱えない時は、ちょっとだけそこから離れておくことも大切です。そして、自分がその問題に取り組めるような状況になってきたら、少しずつそれと向き合っていくわけです。

また、ショッキングな出来事が特になかったとしても、小さな不安が蓄積し、それをなんとかしようと心身ともにエネルギーを使いすぎている場合、他にまわせる余力がない状態になっていることがあります。それはとてももろい状態です。そこに、さらなる問題がふりかかってくると、たとえそれが軽い問題であったとしても、いっきにこころのバランスが崩れてしまうこともあります。ですから、不安をあまり溜め込まないことが肝心です。

不安なことは、誰かに話し共有するだけでも軽減していくものです。特に自分にとっての重要な存在、信頼できる人に不安なことを話していくと、話をするだけで不安は軽減されていきます。新入生の場合、大学のシステムがよくわからない、どこに何があるのか分からないとか、日々の小さなことで困ってしまうことも多いかもしれません。この時、もし傍に相談したりする人がいれば、ずいぶんと助けになります。同級生に「どうすればいいのだろう」と聞いたり、あるいはお互いに「なんだか分からないよね」と話しあったりするだけで、解決方法がみつからないとしても不安は軽減されていきます。

そして、不安が軽減された分、心の中に余裕の空間ができることになります。この余白がないと、次に自分はどうしていくのか自分はこれからどうしたいのかなど、今後の計画や目標、あるいは解決に向けての選択肢などを考えられなくなります。また、不安が強い場合、身体的にも不安の反応が出てくるといわれます。こころと体は連動していますから、不安になれば身体は、緊張・警戒状態になっています。そんな時は、体をリラックスさせてあげる時間も必要になります。例えば、お風呂にゆっくりつかるとか、体を休める時間を多くとるなどは簡単にできます。不安を一時的にでも忘れていられるような時間、あるいは体をくつろがせてあげられるような時間を見つけておくことは大切です。不安はなくなるものではありません。ならば、不安が過剰になって苦しむのではなく、不安が自分の味方として機能していてくれるよう、上手に付き合う工夫が必要なのかもしれません。

(一粒の麦 No.44 2011年9月)

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2019年04月11日